・チベタンコーラル、ターコイズ、アンバー について
ヒマラヤ地域においては、コーラル(珊瑚)、ターコイズ(トルコ石)、アンバー(琥珀)のビーズが装飾品として使われています。
仏像の装飾や、女性のアクセサリー、男性の富の象徴として使用されています。
コーラルは赤色、ターコイズは緑(黒)色、アンバーは黄色、と仏教五色(赤色、緑(黒)色、黄色、白色、青(紫)色に通じると考えられています。
これらに、白色のパール(真珠)とジービーズを組み合わせたネックレス状のアクセサリーは、ステータスシンボルとして今もチベット人の祭礼時に使われています。
チベタンコーラル
日本では、チベタンコーラルのことを「山珊瑚」と称する場合があり、ヒマラヤ山脈が地殻変動で隆起した時に、海底にあった珊瑚が一緒に地上に押し上げられたものであるとの説明をよくされますが、ヒマラヤ山脈が地殻変動により出来たのは、およそ2500万年前であること、チベタンコーラルが綺麗な赤色を残していることを考えると地殻変動による化石珊瑚とは考えづらいと感じます。
化石珊瑚(Fossil coral)というものも存在しますが、基本的に黄土色しておりチベタンコーラルとは別物と思われます。
ヒマラヤ地域に仏教文化が広がったのは、西暦700年前後であることから、シルクロード貿易の交易品として、地中海の珊瑚がチベットに伝わったものと、当店では考えています。
これを証明するように、チベタンコーラルとまったく同じような品質の珊瑚のビーズはモロッコでも多数見受けらます。
ちなみにチベタンコーラルのDNAを調べたという人に聞いた話では、チベタンコーラルと地中海の珊瑚のDNAはとてもよく似ているそうです。
コーラルの原産地はともかくとして、コーラルのビーズがチベットで愛用されていてことには変わりなく、色が濃い赤色で、よく使い込まれていて、自然な摩耗があるものは殆どないことから、近年では程度の良いチベタンコーラルを目にすることはまず有りません。
程度の良いものがコレクターの手から手てと渡り歩いているような感じです。
チベタンターコイズ
チベタンターコイズも、交易品としてイランから流入したトルコ石がルーツと考えていますが、古いものはコーラル同様にチベットに渡ってから、1000年以上経っているものもあり、アンティークとしての価値は相当なものです。
チベットのカム族女性のように、頭にかぶる帽子に、びっしりターコイズを縫いつけてあることもあります。
三つ編みにした髪の毛にターコイズを編みこんだり、ネックレスや数珠の一部ににもターコイズは使用されています。
大昔のチベットでは、ターコイズはお金のように扱われ、我が子がお寺に小坊主として入る時の持参金(持参石)として、親は畑を畑を売ったり大変な苦労をして良いターコイズを手に入れたという記述がミラレパ(チベットで最も有名な仏教修行者(1052-1125年))の伝記の中にもそのような記載がされています。
チベット寺院をお詣りするチベット女性の首元には、赤い紐に通され、汗と脂がしっかり染み込んだ濃い緑色のターコイズを見かけることがあります。
長い間、親から子供へと伝承されてきたのであろうターコイズは、惚れ惚れするほどの色艶であると同時にチベット人の信仰の深さを垣間見ることができます。
チベタンアンバー
アンバーもシルクロードの交易品だと考えていますが、ウクライナ地方のモノとは色合いが違い、チベットのアンバーは透明感の無いマットな黄色です。
チベットアンバーと非常に似たアンバーが、アラビア半島でもたくさん出まわっています。
しかし、チベット伝承のアンバーはより使い込まれたような摩耗があります。
しかし現在においてはアラビア半島のアンバービーズを買い付けしているチベット人やアンティークディーラーもあり、回りまわって一番高額で取引されるチベットアンバーになってしまうような気もします。
当店がチベットアンバーとして認めているのは、ヒマラヤ地域で何十年も伝承されてきたものであり、本当の原産地に拘るわけではありません。
チベットの祭礼用衣装には、大量のアンバー首飾りをつけた人がいます。
これらのアンバーは先祖代々伝承されたものだと思います。
アンバーにターコイズやシルバーを組み合わせたビーズもあります。
アンティークのジービーズにアンティークのコーラル、ターコイズ、アンバーを組み合わせたネックレスは、ヒマラヤのジュエリーとして最高の逸品としてコレクターには垂涎のアイテムです。